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村上龍 歌うクジラ

歌うクジラ

歌うクジラ
村上龍・著、坂本龍一・音楽
価格: 1800円
対応機種: iPad/iPhone/iPod touch iOS3.2以降
容量: 83MB
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坂本龍一・作曲 電子版『歌うクジラ』挿入曲 sound: on | off

story

「歌うクジラ」のあらすじ

2022年クリスマスイブ、ハワイ沖の海底で、グレゴリオ聖歌の旋律を正確に繰り返し歌うザトウクジラが発見された。
細胞を分析した結果、そのクジラは 1400歳を超えていることがわかった。
このクジラの遺伝子を解析することにより、人類はついに不老不死に関わる遺伝子を特定する。
その魔法のような遺伝子は、"Singing Whale" 、「歌うクジラ」と呼ばれるようになった。
それから100年後。あらゆる階層において棲み分けが完成し、「理想社会」と呼ばれていた日本。
分断された最下層区域である「新出島」から、アキラという一人の少年が、脱出をはかろうとしていた。
アキラは、処刑されることになった父から、不老不死遺伝子「歌うクジラ」に関する重要な秘密を託されたのだった。
秘密情報を書き込んだチップを体内に埋め込み、最上層施設に住むある人物に届けるための、アキラの旅がはじまった……。

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著者コメント

  •  最新作の長編小説『歌うクジラ』(初出:文芸誌「群像」講談社」)を、電子書籍化した。紙の書籍に先行しての発表となる。現在はiPadのみで販売しているが、今後は、他のデバイスでも発表していく予定だ。電子書籍に関しては、以前から興味はあったが、昨年あたりからリーダー機能を持つ新しいデバイスが次々と発売され、今年が「電子書籍元年」となるだろうという予感があり、友人の坂本龍一と、そういったことをメールでやりとりしていた。

     今年1月末、『歌うクジラ』は完結し、脱稿後に、これはわたしにとっての最初の電子書籍にふさわしい作品だと確信した。22世紀初頭、つまり100年後の世界を描いた未来小説であり、具体的な未来のアイテムやモチーフがちりばめられている。つまり、不老不死遺伝子が発見・開発され、治安維持から医療までありとあらゆる種類のロボットが活動し、記憶細胞が特定されてイメージの共有や移植のための電子機器が実用化され、宇宙空間への旅も可能になっているという世界が舞台となっている。まさに、電子書籍にふさわしい小説だと思ったのだった。

  •  電子書籍化にあたって、画像と音楽を織り込もうと思った。坂本龍一はオリジナル楽曲4曲の制作を快諾してくれた。坂本から音楽が届いたとき、不思議な感慨が起こった。これまで音楽家は、演劇や映画や舞踏などに楽曲を提供してきたが、「小説のために作られた音楽」というのは、ひょっとしたら歴史上はじめてかも知れないと思ったのだ。音楽は、基本的にページをめくる動きがトリガーとなって、600ページを超える作品中、10数カ所で聞こえてくる。どのシーンで、どの音楽を、どのような音量で聞かせるかを決めるのに1ヶ月以上かかった。単なる背景音にはしたくなかったからだ。

     紙書籍の版元である講談社の理解を得ることも非常に重要だった。講談社は、わたしをデビューさせてくれた出版社であり、友人も多い。紙書籍に先行して電子書籍を販売することには抵抗も大きいと思ったのだが、「そういう新しい試みを講談社は支持します」という理解ある反応が返ってきた。アプリ製作は、JMMの運営・配信などでタッグを組んできたグリオに依頼したが、そのあとも、講談社は終始好意的で、情報を交換したり、助言を受けたりした。

  •  画像に関しては、グリオ所属のアーティスト篠原潤が担当した。表紙と扉絵ではアニメーションを使っている。静止画では紙書籍の装幀や挿絵と変わらないと考えたからだ。篠原君が、膨大な資料を読み込んで作成した銃器や警備用ロボットや飛行自動車、それに宇宙エレベーターなどのCGは、電子書籍でなければ表現できなかった。だが、画像も、音楽も、小説という表現の自律性を損なうことがないように注意した。小説の世界を「補完する」ためにではなく、「広げ深める」ために、画像と音楽を使用するように心がけた。

     電子書籍市場の将来については、わたしは予測できない。おそらく音楽や映画のパッケージ商品とは違って、紙書籍は残っていくと思う。だがある程度の変化と淘汰は起こるだろう。だが間違いないのは、作家と読者との距離が縮まるということだ。作家は、新しい媒体を手に入れることになるわけだが、これまで以上に質の高い作品を生み出す必要がある。電子書籍元年にあたっては、「今後どうなるのか」ではなく「自分はどう対応するのか」が求められているのだと思う。

    村上龍

review

書評 / レビュー

22世紀を描いた近未来小説である。効率や不老不死や完全平等社会は人類の究極の目標たりうるのか、
100年後の私たちの生活は-など読者はイメージをかきたてられる。
本書は電子書籍として7月に先行配信され、坂本龍一の音楽がバックに流れる新たな読書法が注目された。
電子書籍元年といわれる今年にふさわしい。やはり村上龍は時代の一瞬を鮮やかに切りとり、未来を示す話題に満ちた作家である。
(評・横尾和博 北海道新聞 2010年12月19日掲載)

artwork & frontispiece

章扉 / アートワーク

ryu's memo

村上龍 取材メモ集

  • メモ科学編
    ●ナノテクの完全自動編み機←シームレス(安価な商品)

    ●SW遺伝子はどこにどうやって保存されているのか。遠心分離器にかけたあと零下90度で冷凍庫に保存する。
    ●強盗団は、脳冷凍保存用の「不凍液」と「還元剤」を売買している。不凍液は、分子量の小さな物質。もともと生体は水にフィットするように進化している。50年ほど前に、火星に植民地を作る過程で非常に水に近い不凍液が開発された。またその不凍液を細胞内で排出し、再び水を注入できるようにする触媒も開発された。強盗団はそのどちらかを、または両者を売買している。

    ●電子メモリによるデータベースの最小化・バイオ分子デバイス
    ●伝えたい匂いや匂いをセンサーで捉えて送信し、脳で具体化する。

  • ●犯罪者予備軍は、活動過多であり、脳の喚起力が弱い。だから刺激を求めて犯罪に走る。だから総合精神安定剤は理想的な「興奮剤」である。より小さなことに興奮するように脳の喚起力を基本的に高める。

    ●電子・電気器機がネットワークとして結ばれるが、政府の方針は格差を伴って遮断に動く。非常に複雑なやり方での遮断。
    ●光と音(?)による記憶喚起装置・非常にシンプルで、脳の海馬の研究が進み記憶の在処が判明して可能になった器機。ICチップで記憶の在処を前もって探っておき、そのあとその部分を刺激する光・可視信号を送って当該記憶を正確に喚起する。アキラはその装置を使って過去に運ばれていく。内乱、食糧危機、父親と母親の記憶などなど。ただし記憶は、脳内の記憶を再現する場合はフラッシュバックの映像と音となる。だが外部からの局所刺激で脳内の感覚再現装置を喚起させる場合は鮮明な映像と音を再現させることが可能。脳科学の進歩というより、ナノテクの進歩で可能になった。

  • ●要は、上記の機械は、「他人の夢を売る装置」だと言える。
    ●上記の装置は、他人の海馬からの情報を別媒体に保存しておくことができる。ただしその映像や音はバラバラで編集・制御されていない。その映像を描写すること。メモリアック映像再生装置。

    ●病気になりにくい遺伝子を組み込む。◇第19染色体にあるE2、E3、E4と呼ばれるタンパク質。高比重リポタンパク質HDL(善玉コレステロール) ◇第6染色体免疫機能・HLA遺伝子20種類のうちDR1を持ち、DR9を持たない。DR1はカンジダ症などの細菌にすぐに反応し、DR9は逆に膠原病・自己免疫疾患にかかりやすい
    ●ICチップに無線を飛ばして映像を引き出す。moo-pon, moo-cum
    ●携帯から大画面に文章を飛ばす。

  • ●空中をとぶ自動車もあったら運転の妙味が一般的ではなく普及しなかった。

    ●ベリチップの改良型で血圧やその他の値を図る。
    ●アルコー延命財団・老人施設内の人体冷凍保存装置
    ■性犯罪再発防止策として
    ★テロメアを切られる人びとは、かっては脳に居場所を示すICチップを埋め込まれていたが、やがてスラム化が完成し、棲み分けと管理が徹底すると、ICチップは、「人権無視・差別」だとして、廃止された。
    ★脳に作用して性欲を消す精神薬&極小ICチップ
    ★脳神経系に作用して性的な快楽を苦痛に変える精神薬&極小ICチップが開発されている。

    ●ロケットで垂直に宇宙空間のステーションまで飛び、そのあとターゲットとする都市の空港へとまたほとんど垂直に降りていく。